RPAの成果、成否、どうやって決める?

RPA応用編

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)というワードが浸透して各社で様々な製品が出されていますね。

RPAは、「作業を自動化できる」という点だけ取り上げられがちですが、そもそもは、業務効率化の補助ツールとして使用し、人材をコア業務へと移行させる「業務改善の一環」として導入を行う事が、本来の価値となります。つまりRPAの成否は、業務の削減工数だけではないのです。

では実際にどのようにRPA導入、成果・成否の判定すれば良いのか?
導入前のポイントから、成果を算出するまでの手順を見ていきましょう。

1:現状の把握

1-1:業務の棚卸し


まず各部署・各担当にヒアリングし、現在どのような業務があるのか把握しましょう。
そして作業名、作業概要、作業時間、頻度、重要度、目的、自動化要望度などを明確にします。
エクセルなど表にまとめておくと整理がしやすいと思います。
各項目で記載しておきたい事を下記にまとめています。

作業名、作業概要、担当部署
スモールスタートで始めるのであれば、自部署内だけでもOKです。

作業時間
1回の作業でどのくらいの時間がかかるか。日報をさかのぼったり、実際に時間を測ってみたりして明確にすると良いでしょう。

ミスの件数
ミスによる手戻り時間なども考慮します。

担当人数
上記作業時間に加え、何人でこなしているか。1人の作業時間x担当人数で、当業務の全体の作業時間を算出します。

頻度
作業時間 × 担当人数 × 頻度 を計算することで年間の作業時間が明確になります。

業務の目的

重要度
目的などから、当業務が「あればベスト」「なければ回らない」のかで、重要度付けをします。

自動化への要望度合い
朝、早めに出社してやる必要があるや、夜勤対応しなければならない、などで重要度も考えながら、自動化の要望が強めかどうか明確にします。

1-2:現状の問題点を明確にする


次に現状の問題点を明確にします。具体的には、下記の有無についてなどを確認してみましょう。

・属人化して、1人に負荷が集中していないか
・不要な手順がないか
・自動化による工数削減できそうな箇所がないか
・人によって手順が異なっていないか

特に不要な手順を明確にしておくと、この後の業務の標準化の際に役立ちます。このほかにも、社内で感じている問題点をあらかじめリストアップしていくことで効果の計測がしやすくなります。

1-3:標準化


次に標準化です。標準化というのは、人によって手順が異なっている場合、効率的なやり方に統一する事です。先ほどの「問題点を明確にする」の問題点でも上がりましたが、一連の業務が担当者によって処理の方法が異なってしまうと、RPAでフローを作成はできなくなってしまいます。

標準化の第一歩として一連の業務を表やフロー図にまとめてみると良いでしょう。表や図式化することで、業務を標準化するだけではなく不要な手順が見つかったりより効率的な手順が発見することもできます。

上記の3つの手順は、RPAに限らず業務改善という視点で整理を行うのと同義なので、業務全般で役立つ内容です。

2:RPAの成果を測る

現状の把握が完了したら、成果を比較するために導入したRPAで業務の自動化にかかった成果と削減された成果を算出します。
具体的な手順を見ていきましょう

2-1:業務の自動化にかかった工数を出す


業務の自動化には、ツール自体のコスト、フロー作成のコスト、運用・保守にかかるコストなどを総合的に見る必要があります。

製品自体の金額は安くても、自動化フローの作成で多額の料金を取るところも少なくありません。やっとの思いで導入できても、フローの改善・修正などで、コストが発生することもあります。

また、RPA導入支援を行う企業に払う金額だけでなく、自社の人間が、自動化の為に動くコストも考えなければいけません。
具体的には、下記のフェーズ毎に金額を算出してみましょう
①ツール自体の値段

②RPAフロー作成にかかる値段
仕様検討時間
フロー作成外注費

③運用にかかる値段
障害時対応のフロー修正外注費
(内製化するのであれば、作業時間)

④保守
フロー改善の外注費
(内製化するのであれば、作業時間)



2-2:RPA導入前の作業量、導入後の作業量を比較する


次に導入前にかかっていた作業時間が、どれだけ減ったのかを算出します。トータルで減った時間を明確にします。この時間に担当者の時給をかけることで、業務自動化による効果を金額換算することができます。業務自動化による利益は、純粋な効率化の時間によって生み出されるだけではありません。そのほかの副次的な利益もあります

2-3:社員満足度も明確にする


早朝・深夜作業、単純作業、ミスが許されない作業など、心理的負荷が高い業務が削減された場合には、負荷が軽減されます。
社員の心理的負荷の軽減による離職率の低下などが効果として表れているか明確にしていきます。

2-4:空いた時間で、社員をどの業務振り分けれたか


業務改善ができれば、削減された工数を付加価値の高い別の作業に、社員を充てる事ができます。
それによって増えた売上などがあれば、その点も考慮します。

2-1ではRPAにかかる費用ですが、2-2〜2-4での項目はRPAによって削減された効果となります。2-2〜2-4での項目を図にまとめると以下のようになります。
では実際にRPAにかかる費用と削減された効果を比較していきましょう。

3:RPAの成否をトータルで判定する

まず上記で洗い出した効果を、同じ尺度の物差しとして計測しましょう。時間、料金、作業量など違う尺度で計測してしまうと、成否を判定するのが難しくなります。

例えば、すべての項目を料金という尺度に換算できれば、成否を判定しやすくなります。
具体的には以下のようなイメージです。

作業時間を料金換算するには
先ほどの説明でもありましたが、削減時間×時給をすることで効果を金額に換算することができます。担当者が時給ではない場合は、平均給与を1ヵ月の勤務時間(240時間とする)で割って、時給にします。

離職率の低下を料金換算するには
退職人数が1人減ると、年間480万円の利益創出をするため、月換算で40万の利益が出る計算となります。
参考:離職率が1%改善すると、どれだけ利益貢献するか?

生産性を料金換算するには
例えば、営業リスト作成で、人の手だと100件作成するのに1時間かかっていたのが、自動化により5分で終わるようになった場合。
100件中1件の成約、その1件につき10万の売上になるのであれば、60分で10万だったのが、5分で10万稼げるようになったとみなす事ができます。


それでは、具体的に数値化をして、成果を算出してみましょう。
算出には以下の式を用いて、トータルの成果を算出します。

【(削減工数 x 時給)+離職率の低下による利益 + 生産性の向上によって増えた売上) 】ー
【RPAツール料金+RPA導入コスト+RPA運用コスト+RPA保守コスト】
= トータル成果



式だけではわかりづらいかと思いますので、具体的な事例を元に、各項目の数値を式に当てはめて算出してみます。

事例.1
1200円の時給で、100時間で12万の売上をつくっていた作業をRPA化。
60時間で12万売上げるようになった。
気持ち的に楽になり、生産性が10%上がり売上が1.2万ふえ、離職者が減った(0.5人)場合
【削減工数(40時間 x 1200円):4.8万 + 離職率の低下による利益:20万 + 生産性向上による利益:1.2万】-
【 RPAツール料金:10万 + 導入コスト(仕様検討10時間+外注費5万):6万 + 運用コスト(月1回の保守で5000円):0.5】
= 25万 - 16.5万 = +8.5万の成果(年間+102万)

事例.2
1200円の時給で、100時間で12万の売上をつくっていた作業をRPA化。
40時間で12万売上るようになった。
気持ち的に楽になり、生産性が20%上がり売上が2.4万ふえ、離職者が減った(1人)場合
【削減工数(60時間 x 1200円):7.2万 + 離職率の低下による利益:40万 + 生産性向上による利益:2.4万】-
【RPAツール料金:10万 + 導入コスト(仕様検討10時間+外注費5万):6万 + 運用コスト(月1回の保守で5000円):0.5】
= 49.6万 - 16.5万 = +33.1万の成果(年間+397.2万)

上記のようにして成果を測ることができます。

いかがでしたか?
RPA導入、そして成果・成否の判定は、ツール料金・導入コスト・運用保守コストをいかに下げるか、そしていかに効果を最大化させるか、が肝になります。
是非、上記を活用して業務整理と成果の計測、判定を行ってみてください!それでは、また!

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